貢献する板診会

コラム

小規模事業者向け プレスリリースの書き方

お店の新商品やイベントのプレスリリースを出してメディアで紹介してもらいたい!
ただ、何を書いて、どこに出せばいいのか?という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか?
また、近所にある同じお店や工場が、ことあるごとにメディアに紹介されるのはなぜなのか?
といった疑問も。
今回は、個人商店などの小さな会社に特化した、メディア取材を呼ぶプレスリリースの発信法をご紹介します。
大企業含め、幅広い企業を対象にした一般的なプレスリリースの書き方、とは少し違うことをご了承ください。

① メディアの事情 なぜ同じ店が何度も取り上げられるのか?

「普通のお店なのに、あそこのお店はいつも新聞やテレビに出る」。この現象が起こる理由の1つが、メディアにとって、そのお店を紹介する“意味”を持っているからです。
テレビ・新聞・雑誌、それぞれの媒体では、記事・番組の担当者が、企画に沿ったネタを探しています。
新聞の科学技術面であれば革新的な技術を搭載した新製品を、地域面であれば担当エリアの面白くて旬な話を、街をぶらぶらするテレビ番組では、個性的な商品や店主がいるお店などを探しています。

では、「革新性」「面白さ」「個性」を判断=掲載の決定するのは誰なのでしょうか?
もちろん読者・視聴者なのですが、「プレスリリースの発信」という側面から考えると、担当者(=リリースを最初に読むと思われる記者)の上司(複数いる場合も)です。

この前提で、リリースを出す側は何をすればいいのかを考えると、、、
A:担当者に興味を持ってもらう。
B:担当者が上司へプレゼンしやすい内容を書く。 この2点が必要です。

話を戻して、「同じお店が何度も紹介される理由」を考える時に重要なのが上記のBです。
新聞・テレビ、すでに記事化されたコンテンツには、必ずそのお店を“紹介する意味”が書かれています。
記事になったものは、数あるネタ候補の中から、複数回の会議やチェックを経て、掲載の意味ありと判断されたものです。
多くの目で既にOKが出たものですから、まったく知られていないお店の情報をイチからプレゼンするよりは、Bの上司の許可を取るための情報としては格段に有効なものです。
ただ、そのままではマネになるので、この情報を活用し、最新の情報や独自の視点を加え、独自のコンテンツにします。
つまり、記事自体が良質のプレスリリースとなり、更なる取材の連鎖に繋がる、という現象が起きています。

② 街の商店や工場はどうすればいいのか?

多くのプレスリリースの情報だけでは、企画書を埋め、会議にかけるだけの情報がないことがほとんどです。
とくに、知名度の低い小さな会社の場合は、新聞の1面・経済面やテレビのストレートニュースに、その新商品の情報のみで登場する可能性は限りなく低いです。
なんらかの、企画コーナーなどで、ストーリー性の中で紹介する方が可能性が高くなります。

この企画コーナーの担当者は、プレスリリースに興味を持つと、その会社のホームページ、ネット情報など、必死に追加情報を集めて企画書になりうるストーリーを作ります。
さらにリリースを出した企業に電話やメールでアクセス、追加取材を行います。

ここで発生しがちなのが、、、メディア側・企業側の担当者の相性・性格・力量によって、企画書に載せるべき価値ある情報が、取材により表出化しないことです。メディアは商品に込めた、店主独自の「思い」を聞きたいのに、抽象な「他社にはない当社のノウハウを活用」などと答えるにとどまってしまうと、メディア担当者は上司に「他社にないノウハウって何だ!やり直し!」と言われる結末が想定されます。
また、「企画が通るかわからない中、資料の請求やしつこく電話取材しておきながら、最終的に断ることになる可能性も高いので、他にもっといいネタがあるか探そう」と思うこともあります。繰り返しになりますが、すでに記事化されていれば、その情報も使いながら話を深められるので、よりよい追加取材が効率化できるのです。

③ メディアが「連絡してみようかな」と思うプレスリリースとは?

こうした状況の中で、プレスリリースに何を書くか?を考えます。一般的なプレスリリースは「簡潔に」と書いてありますが、筆者がおすすめするのは「電話連絡しなくてもそのまま企画書にできる情報」を盛り込むことです。
ここで創業100年の和菓子屋さんの新作の饅頭、について考えてみます。
簡潔にすると・・・
「こだわりの原材料を、120年伝わる製法で、新たな〇〇を加えて洋風に仕上げた!」
といった売り文句はよく見ます。

一方、繰り返しになりますが、メディアは「この店を紹介する意味」を探しています。
原材料にこだわるのも、伝統がある店も、和を洋に仕上げる食品も全国どこにでもあるので、この情報は企画書の要素にはなりえません。

欲しいのは、「こだわり」とは何か?「120年伝わる製法」とは?「なぜ洋風にしたのか?」といった「このお店ならでは=このお店を紹介する意味に繋がる」情報です。
例えば、、、
「店主が青森の農家〇〇さんを訪ね、意気投合し、お酒を飲みながらそのこだわりに感銘して仕入れを決めた」
「120年間、父の代で一瞬途切れかけた製法だが、近所で▲▲店と営む、〇〇さんに励まされて、何とか継承してきた」
「和菓子店を継ぐことに疑問を持っていた3代目が、イタリア留学したときに出会った〇〇さんとの思い出を元に考案」みたいな情報が出てきてはじめて、「このお店ならでは」の情報になるのです。

つまり、顔や情景が見える情報を書くことが重要です。
1枚にまとめる必要はなく、写真などを追加しながら4~5枚になっても構わないと筆者は思っています。

④ 一般的なプレスリリース向けキーワードと小規模事業者向けキーワード

一般的なプレスリリース向けのフレーズとして効果的と言われるのが
・最も情報⇒日本初、業界初、最多、最小
・希少性⇒〇〇で唯一、▲▲では珍しい
・新規性⇒画期的
・感情(感動的な・ほっこりする)、時流(今話題の)、季節(冬にもってこいの!)、
・将来性(数年後に主流になりそうね)
などが挙げられます。
これは、いわゆる大企業が、全国紙のトップに近い面やテレビ番組のストレートニュースになる場合は合致します。
しかし、知名度の低い小さな会社では、こうしたことよりは「独自性」を売っていく方が、メディアの興味を引く可能性が高いのではないでしょうか?
この独自性に繋がるのが、「顔や情景が浮かぶ」情報です。
・現在の製品・お店に至った経緯
・試行錯誤の過程
・周囲の人達の関わりや声
・商品やお店を通して目指していること=想い
などです。

ここで、ある酒屋さんが企画している試飲イベントの例をご紹介します。
・さまざまな味の個性的な日本酒を十数種類揃え、「好きな日本酒」を見つけてもらう、というイベントです。
・店主自ら利き酒をして選んだものを、店主による親身な解説、さらにお土産付で!というものでした。

実は、このリリースにはある、「店主独自の品ぞろえ」「解説」「お土産」はどの酒屋さんも試飲イベントをやるのであれば当然のことです。
そして、この店主に聞き取りを進めると、、、
「私は酒選びがへそ曲がりで、どこにでもあるものにはあんま興味なくて、この酒蔵は今後伸びる、とか、そういう事をお酒を飲みながら、話をしながら、選ぶんです。」と。

この情報があったら、お酒好きの人であれば「どんなお酒があるんだろう?」とわざわざ行きたくなりますし、メディアとしては、「へそ曲がり店主が選んだの絶品日本酒」とか「町の酒屋と酒蔵の絆」などの企画を立てやすくなります。つまり、「へそ曲がり」という情報を加えることで、この酒屋さんの独自性が高まるのです。こうした顔の見える情報を出しつつ、イベントや商品のリリースを作ってみてはいかがでしょうか?

⑤ リリースを出す時のテクニック

作ったリリースをどこにどう出すのか?PRタイムズなど有料の配信代行サイトがありますが、月3万円~、などコストを要します。
そんなときに有効なのは、自ら媒体を選んでピンポイントに出すことをお勧めします。街の商店や工場であれば、新聞社の〇〇支局、地方新聞社、などの拠点がよいでしょう。
また、FAXよりも郵送で、ダイレクトメールではなく封筒に手書きであて名書きをすることをお勧めします。
家庭でもダイレクトメールはそのまま捨ててしまうけども、手書きの封書はとりあえず中を開ける、という心理が働くと考えられるからです。

  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事
岡本 陽介

大学卒業後20年以上、テレビ番組のディレクターとして報道・情報番組などを制作。個人商店・商店街などを中心にプレスリリース作成支援、YouTubeでの情報発信の支援などを行う。

  1. 小規模事業者向け プレスリリースの書き方

月別アーカイブ

PAGE TOP